もしこんなことが自分の身に起こったら? ポン・ジュノ監督も称賛する一作が日本公開。『スリープ』

 実際にこんなことがあったら、しかもそれが自分の配偶者の身に起こったら、「夜が怖くてたまらなくなる」はずだ。が、この映画にはコメディの風味もあり、SF的なところもあり、同時にしっかりラブストーリーとして成立している。味付けにグラデーションがある。

 夫・ヒョンスと妻・スジンは高層マンションに住んで安定した生活を送ってきたが、ある日、突如ヒョンスが「誰かが入ってきた」と口にする。以降ヒョンスは毎晩、眠りにつくたびに「奇行の人」となる。日中はおだやかなのだが、布団に入るといけない。ある夜は窓から身を投げ出そうとしていたところを、スジンが力づくで止めた。が、翌朝のヒョンスは寝ているときのことを覚えていないのだった。途方に暮れたヒョンスはスジンを伴ってクリニックの診療を受けるのだが、ここで話をより奥深くするのはスジンの母が持ってきた「巫女からのおふだ」の存在。夫婦は今後どうなるのか、医学とお札のどちらがより有効なのか、「寝ない」とか「別居」という案はないのか、など、さまざまなことを観る者に考えさせながら、実にテンポよく、ラストまで駆け抜けていく。温厚さを崩さないヒョンス(イ・ソンギュン)もいいが、スジンを演じるチョン・ユミ(『新感染 ファイナルエクスプレス』に出ていたほうの)も快演。彼女のファンがさらに増えそうだ。

 「第76回カンヌ国際映画祭」批評家週間正式出品作品。脚本・監督のユ・ジェソンはボン・ジュノ監督のもとで経験を積んだ気鋭で、ジュノ監督も本作を称賛している。

映画『スリープ』

6月28日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開

脚本・監督:ユ・ジェソン
出演:チョン・ユミ、イ・ソンギュン
2023年|韓国|5.1ch|ビスタ|韓国語|94分||英題:SLEEP|字幕翻訳:石井絹香|配給:クロックワークス|G
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公式サイト
https://klockworx.com/sleep